天使の歌声 ~ニューヨーク~
2006年 06月 20日
夜のエンパイヤは外から見るとこんなに綺麗。
(後ろに光る2本の光は、WTCがあった場所・・・)
エンパイヤから望む夜景もこんなに綺麗なのだが、やはり外から見た一番背の高いエンパイヤステートビルディングが加わってこそニューヨークの摩天楼だ。
エンパイヤの先の光は記念日や祝日、特別な日にはイルミネーションが変わるのだ。
赤はバレンタインズ・デイ。
緑は、セントパトリックス・デイ。
赤・白・緑---コロンバスデイ。
緑・白・オレンジ---インド独立記念日。
赤・黒・緑---キング牧師の日。
赤・白・青---大統領の日。メモリアルデイ。独立記念日。レイバー・デイ。ベテランズ・デイ。フラッグ・デイ。
といった具合に、他のも様々な色のパターンがある。
ちょっとご紹介。
きれいだね。
何を意味してるんだろ?
幻想的・・・。
シンボルだからね。
誰が考えるんだ?
ちょっと暗くね?
(写真の統一性が取れてなくて御見苦しいですが、ご了承下さい。)
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エンパイヤからの眺めを目に焼き付け、名残惜しみながらエレベーターを降りた。
地上に降り立つと、現実に戻されたような、今見たものが嘘だったような、そんな不思議な気分。
ふと見上げると、青く光る角と赤と白のイルミネーションで堂々と立ちはだかるエンパイヤの姿。
今まであの展望台に居たとは思えないくらい高い。
年間250万人の人が来場する理由も分かるな。
最後の晩餐にと何かを決めていた訳じゃないが、最後くらいは豪華にいきたい!
俺はガイドブックを広げ、然程遠くない店を探した。
アメリカらしくステーキと思ったが、病人のMが喰えるわけが無い。
時間は22時を回ろうとしていた。
数分悩むも、どこの店もピンと来ない。
どこもメトロに乗って遠くへ行かなければならないし、しつこい食べ物もMは納得がいかない。
でも俺は最後くらいはちゃんとしたいんだ。
時間だってMの為に遅らせたし、もうココにだって来れないかもしれない!
Mの状態を知っておきながらも思い遣りの無い我儘も言った。
Mは怒り、「じゃあ好きな所に行けば良いやん!」投遣り。
ガイドブックを睨み付けながら口論の末、結局デリで済ませる事になった。
病人じゃなければ、Mだって美味しいもの食べたかったと思う。
この時はお互いに凄く疲れていたし、ストレスも溜まっていた。
お互いに全てを受け入れる心のゆとりがなかった・・・・・。
お互いギクシャクしながら渋々ホテルへ帰る事に・・・。
でもそんな気持ちを一気に打ち消す出来事が起きた!!
地下鉄のホームへ向かう途中、遠くで何か音楽が聞こえる。
ピアノ?
さらに進む・・・。
音は段々と大きくなってくる。
プラットホームに辿り着くと、大きな後姿で黒いパーカーのフードを被った黒人が肩からぶら下げたキーボードを目を瞑りながら弾いている!!
正直・・・
俺 (うわ、黒人さん??こーやって金せびろーって魂胆だな。勝手にそこでやってるんだから、やる義理はないよな。観光客だからってなめんなよー!)
だけど、ピアノの弾き方はやたら上手い。
♪~♪~♪♪♪~♪~♪~♪♪♪~♪~♪~♪♪♪~
♪~♪~♪♪♪~♪~♪~♪♪♪~♪~♪~♪♪♪~
『Hu~u~~~~Hah~~~♪♪♪』
ゾワッ!!
一気に鳥肌が立った!!
歌詞は解らないけど、とにかくすっごく綺麗な声!!
優しいピアノの音と、鼻を通ったハスキーに似た声でありながら力強い歌声!!
時折みせる裏声は天にも届きそうなくらい透き通っている!!
曲調はミディアムテンポのジャズ調!!
心臓を打ち抜かれたような衝撃!!
ホンモノとはこういう人の事を言うんだと思った!
Mも同じ事を感じた様で、無言でお互い目が合い、頷いてしまった。
言葉にならない上手さ。
Mはビデオを取り出し、その人の歌声を収録した。
その人は最初気が付いていなかったが、ビデオに気付くとニコッと笑った。
普通、怒ってくるんじゃないかと思うんだけど、この人の人の良さがこの行動1つで解った。
優しい歌声は、人柄からも出てるんだ・・・。
先程の俺の偏見が、尊敬の眼差しに変わり、謝罪と感謝の意を込めてチップを側に置いた。
Mも「ちょー、俺の財布からチップ出して!」と必死。
本当、お金を取っても良いパフォーマンスはこういう事を言うんだと思う。
ほんと、ありがとうって、良い歌をありがとうって思えるから。
この人のすごい所は、ずっと目を瞑って歌に集中している事、チップを側に置くとニコッと微笑み小さく短く「Thank you」と言ってくれる。
幾ら轟音の電車が来ようが、歌に乱れは無く、むしろ轟音に勝る声量で歌い続ける。
次の曲に行く時は止まるのではなく、曲調を変化させ2曲目に入るのだ。
音楽と歌は止まる事無く、続きいつまでたってもその場を離れる事が出来ない!
こんな凄い人を目にした為、1,2本電車を先送りにした。
いや、むしろもっと先送りにしてでもずっと聞いていたかった。
今思うと凄く後悔している。
その時も渋々ではあったけど仕方なく電車に乗り込んだ。
まだその人の歌声が耳から離れない。
俺とMはずっと「凄いな、凄いな!」と連発!
M 「あんな人のCDあったら即買いよな!」
俺 「あー、もう、絶対!めっちゃ良かったー!ハーレムのゴスペルとかクラブとか行けんかったけど、もうこれで十分!めっちゃ良い思いで出来たな!」
「もう、日本のアイドルとか恥ずかしくなってくるよな?」
M 「日本にこんな人おったら、爆発的に売れるよな!!」
興奮は冷める事はなかった。
その電車に乗り込んだ時、ギターを持ったドレッドヘアーで目がギョロっとした黒人が居た。
ニューヨーカーのパフォーマンスは何処にでもあるみたいだ!
そいつは突然車内でギターを弾き始めた。
俺等は先程の事があり、期待に胸を膨らませたが・・・・・
一気にテンション急降下
酷いにも程がある。
先程のハイレベルなパフォーマンスを見たからなのか、そいつのギターも歌も癇に障るほどだ。
しかも低レベルに拍車が掛かる。
Mが面白がって遠くからこっそりビデオ撮影すると、それに気付き弾き語りながらこっちに来た。
チップをせびってくる。
こういう無理矢理な奴が居るから、さっきみたいな本物までに偏見の目が持たれるんだ!
ニューヨークの厳しい環境で、本当にチップを生活費にあて暮らして居るのかも知れない。
でも、それは一目見れば解る。
この人は違う。
セコさがにじみ出ているんだ。
もちろん、渡しませんでした。
ニューヨーカーだって、みんな解ってるみたい。
さっきの素晴らしい歌にはすぐ立ち止まり、チップを置いていく。
それに加え、才能を持ちながらあんな小汚い地下鉄で演奏している位だから、本当に厳しい世界なんだと思い知らされる。
それに比べ、電車の中で演奏するその人にはみんな寝たフリか、無視。
チップ渡している人は一人も居なかった。
流れの速いニューヨークで生き抜いていくには、基本的にハイレベルな腕が要求されるのだな。
いつしか、ギクシャクしていた気持ちは何処かに消え、二人で感動を噛み締めていた。
いつかまたニューヨークへ行った時、その人に逢いたい。
まず無理な話だけど、それくらい感動したのだ。
34st駅・・・・
今日もそこで歌っているのだろうか?
by unntama01
| 2006-06-20 18:38
| NY ~旅行記~