ふたりで眺めた『空』 in 六甲山 パート FINAL
2005年 10月 15日
8月29日 午後5時頃
その場所は『六甲ガーデンテラス』
去年の11月。
兄に「星が綺麗に見える所教えてや」と頼んだ所、兄弟二人で、意味も無く真夜中に車を走らせて辿り着いた場所がソコだ。
その時、運良く晴れ渡っていて、星が良く見えたのを覚えている。
星だけじゃなく、神戸の夜景も綺麗に見渡せる場所だ。
夜に何度か行った事があったので、昼間はどんな感じか行ってみたくなった。
俺 「着いたよ。な?ヨーロッパ調の造りになってるやろ?」
T 「わぁ、山の上にこんな所があるんやねぇ。」
俺 「営業してる時間に来るの初めてや。いつもは入り口で車止めて、忍び込むねん。めっちゃ夜景綺麗ねんで!今度は夜に連れて来るよ。」
T 「うん。」
車を置いて、テラスへ向った。
最初に向ったのは『リトルホルティ』
海外のお菓子や飲み物が沢山置いてある店だ。
ズラリとお菓子の棚で陳列され、日本人から見たらいかにも怪しげな物が沢山ある。
冷蔵庫の中は見た事無いような飲み物も沢山。
T 「ウンタマ子!見て!見て!」
冷蔵庫にズラリと並んだ怪しげな飲み物を指差し、
俺 「うわ!懐かしい!これさぁ、シアトル行った時にな、のど渇いたらいつも飲んでた!」
ふと、違う飲み物が目に入って、手に取ると・・・
俺 「・・・え?何これ?made in ・・・ドイツ?!」
T 「あ!これはフランス産や!なんか凄いねぇ。」
アメリカやら、ドイツやらフランスやら、とにかく沢山の飲み物が置いてある。
のどが渇いて、多少気になったので購入する事にした。
俺 「フランス産のこのピンクレモネードの奴!」
T 「あたし、このドイツ産のバナナジュース!」
それぞれ気に入った飲み物を購入。
俺 「どんな味するんやろな?!」
T 「ねぇ。」
他にも、店内をぐるりと見てまわり、アメリカ産の海苔味チップスや、ドでかいチョコレートの固まり、誰が好んで買うのだろうと思う品が沢山置いてあった。
得体の知れない飲み物を片手に神戸を一望できる『見晴らしの塔』へ直行した。
夜に来た時はいつも閉まっていて、上った事が無いのだ。
どんな所なのかとても気になっていた。
螺旋階段を登り、頂上に着くと・・・
夕方6時頃
俺は、神戸の街なんてどうでもよかった。
さえぎる物も無く、夕暮れのオレンジと、まだ染まりきっていない青のグラデーション・・・
そして、太陽の光を演出するかのような、存在感のある雲・・・
薄暗い螺旋階段を抜けた瞬間、目の中に飛び込んできた。
T 「うわぁ、綺麗だねぇ。」
俺 「・・・・・うん。めっちゃ綺麗。」
ちょっと間、言葉を失った。
俺 「・・・んじゃ、開けますか。」
T 「うん。」
二人 「かんぱーい」
“ゴクッ”
ピンクレモネードを購入した俺は
俺 「うわぁ!なんか凄い!この炭酸、口の中で2倍に膨れてシュワシュワ~ってする!」
バナナを購入したTちゃんは
T 「・・・・うん。おいしい。」
俺 「え?どんな味?」
二人で交換
T 「ほぇ~!ホンマや。2倍になるね。その表現合ってる!」
俺 「え?これ美味しい?バナナやのにちょっと酸味無いか?俺はちょっと・・・。」
結局最後まで残ったのはこのバナナジュース。やっぱ美味くなかったのな。
しばし、空に見とれている二人。
俺 「あの夕陽とさぁ、雲が重なってるやん?なんか雲が燃えてるように見えるよな。そんで、雲から光が漏れて閃光状に見えるのが綺麗や。はぁ・・・やっぱ空好きやなぁ、俺。」
俺 「夕日と反対側の空はまだ青いよな。光が当たってる雲がピンク色に染まってる。まだ夕陽に染まってない青と少しピンクがかったうろこ状の雲・・・あれも好きやなぁ。」
T 「ホンマに空が好きなんやねぇ。」
俺 「うん。空好きー。」
T 「・・・・・・・」
T 「ねぇ、ねぇ。」
T 「あちらのソラスキー?」
俺 「うん。スキー。」
T 「こちらのソラスキー?」
俺 「コチラノソラスキー。」
T 「じゃあ、アチラトコチラ、ドチラガスキー?」
俺 「う~ん・・・コチラガスキー。」
俺 「Tちゃんはドチラガスキー?」
T 「う~ん、コチラノソラスキー。」
手をそえながら、なんだかロシア語のような会話に二人で笑ってしまった。
後に、綺麗な空を見る度に俺等は『ソラスキー』と言う様になったのは後の話。
空を眺めながら言うには最高のタイミング。
でも・・・
カップル 「あはははは」
女性二人「ねぇ。そうねぇ。あーでねぇ。」
おっさんワンコと散歩。
塔の上は結構狭い。
こんな密集地帯に4組もの人々が居る中で誰が出来ようか!!
まぁ、心の準備も出来てないし、ココじゃない。
おっさんの可愛いチワワにTちゃんちょっかい出す。
ワンコ 「う~、やんやんやん!!」
吠えられる。
人見知りするワンコだが、高い所から下を見下ろすのが好きな変わったワンコだそうだ。
と、おっさん、エンドレス独り言。
約、30分ほど空の色が変わるのを眺め、心に焼き付けた。
あの秘めた思いと共に見たあの空は一生忘れない。
その後、雑貨屋さん『ホルティ』へ向った。
海外の食料品の他に、民族衣装や、民芸品、ガラス細工に、和風な雑貨、見るだけでも楽しめる店内をあーだこーだ言いながら、見て回った。
アートなポーズをとりながら、延々と笑いが絶える事無く、その場を去った。
俺 「スイス料理行きますか!チーズフォンデュー!!でも、まだあんまり腹減ってないんやけどな。Tちゃんは?」
T 「あたしもあんまり・・・。でも食べれるよ!」
俺 「よし。じゃあ行きますか!」
行かなければならない!
このまま帰してなるものか!!
でも、粉砕したらどうする?・・・・。
車を走らせ、神戸の街へと戻っていった。
車を止め、あまり腹が減ってない俺等は足上げやスキップなどしながら、無駄に動き回り自転車にぶつかりそうになりながらアノ店へ向った。
『SWISS CHALET』(スイスシャーレ-)
神戸のハンター坂を登った所に位置する。
前に、行こうと話していたが、Tちゃんの友人が料理長のイタリア料理へ行った為、後回しになってしまったのだ。
Mとも、北野を廻った時に「エスカルゴ?!」と興味津々で前々から行きたかったのだ。
品の良いウェイターに連れられ着席。
やっぱり、腹が減ってない俺等は、チーズフォンデューと温野菜とサラダのみ注文。
今日は本当にスイス三昧である。
ココのチーズフォンデューはオリジナルらしく、スイス本場の味が楽しめる。
ラムや、シェリー、他には企業秘密的なモノがわんさか入っており、とても芳香な香り。
俺は、チーズが大好きだから、楽しみで仕方ない。
でもTちゃんは・・・
T 「うわー。初めて食べる!良い香りやね。これなら食べれるかも。ウンタマ子先に食べて。」
俺 「うん。じゃあ、行ってきます。」
フワフワのパンに長いフォークを刺し、チーズに絡み付ける。
トロトロのチーズがパンに絡みつき、掬い上げると香りと共にチーズが伸びる伸びる。
素早く口へ放り込むと・・・
俺 「は・・・はぐ!!はぇぇぇ~!あがっ!あがぃっ!!」
熱かった。
猫舌だが、とにかくお酒の良い香りがして、チーズの濃厚な味。
病み付きになった。
俺 「めっちゃ、おいしいよ!!」
T 「ほんま?じゃあ、あたしも食べる!」
俺 「おぅ!行って来い、行って来い!!」
恐る恐るチーズを絡み付け、口の中に放り込む。
T 「ほぇぇぇぇぇぇぇ」
俺 「え?!あかん?!熱かった?大丈夫?!!」
T 「ううん。おいしい!初めて美味しいと思った!!」
俺 「え?初めて?」
T 「うん。あたし、実はチーズめっちゃアカンかってん。」
俺 「え?!うそん!!!じゃあ、今日ずーっとアカンかったん?!」
T 「いや、そうじゃなくて、食べれる奴もあんねんで?でも、匂いのキツイ奴とかあかんねん。それでも、これはホンマに美味しい!!」
俺は知らずに、苦痛を与えてた様子。
ごめんよ。知らずにチーズ三昧にしてしまって。
スイスと言うより、チーズ尽くしになってしまったよ。
それから、本当に美味しいと堪能して貰い、食も終わりに差し掛かっていった。
俺 「ちょっと、トイレ行って来るわ。」
T 「うん。いってらっしゃーい!」
トイレに入り、鏡の中の自分と対話する。
俺 (そろそろか?今?今なのか?ってか、今以外に考えられないし・・・あー!!でも、また振られたら、どうする?気まずくなったらどうする?・・・止めとこ。無理や。やっぱ無理や・・・・)
心の声。言いたい俺、言いたくない俺、両者激突する。
言いたい俺 「今まで、色んな所行って、感触良かったやん!!大丈夫やって。気に入って貰えるって!」
言いたくない俺 「そうやけど・・・でも、また仲の良い友達と気まずくなったらどうするねん。しかも良く逢うねんで?その都度、微妙な空気漂うのとか嫌やん!!」
言いたい俺 「好きなんやろ?一緒に居たいんやろ?じゃあ、今言うしかないって!」
言いたくない俺 「好きやと思う。でも、まだはっきり好きってどういうことかわからんやん!そんな状態で言って、もしOKやとしても、相手に悪いって。」
言いたい俺 「あー、もう!グチグチ抜かすな!男やろ!だから男らしくないと言われんねん!はっきりしろ!」
言いたくない俺 「勇気がないんや。喉まで来てんねん!勇気が・・・」
両者、平行線のまま。
あまり長いと、う○子と間違えられたら嫌なので未だもやもやした状態で、席へと戻る。
俺 「ふー。すっきり。」
全然すっきりしてない。
でも勢いに乗せて話を切り出そうと息を呑んだ瞬間!!
T 「次、あたし行ってこよーっと。」
ぅおい!!
仕方ない。
俺 「い・いってらっしゃーい!そこ曲がった所ね。」
また、同じように1人考え込む。
長いような、短いような1人の時間をただひたすら待つ。
T 「ただいまです。」
Tちゃんが席に着いて、俺はまた息を呑んだ。
俺は,言う気持ちの準備に取り掛かった。
俺 「・・・・・・・!!!!」
目をカッと開き、Tちゃんの顔を見る。
T 「???」
目が合ったので『何?』という顔つき。
俺 「!!!!!・・・・・ふぅ。」
顔を避け、さっき呑んだ息を、深呼吸として抜く。
勇気が出ない。
たった一言が言えない。
T 「???」
首をかしげる。
また息を一気に呑み・・・・・・!!!!
俺 「・・・・・・・・出ようか。」
心臓が口から出るかと思った。
あの一言を言う代わりに本当に心臓が口から出るかと思った。
心臓バクバク鼓動し、手が震えだした。
言い訳だが、なんとなく出る雰囲気だった。
また、席について話すなんて不自然だ。
だから、帰るまでになんとかしないと。
車までTちゃんの話す声や内容を聞いているような聞いていないような、もうそれどころじゃなかった。
なんとかしないと。
俺 「俺、車で送っていくよ!」
運転すれば、まだ時間はある。
T 「え?!いいよ!明日早いんでしょ?」
俺 「うん。で・でも・・・・。」
T 「今日1日運転しっぱなしでしんどいやろうから、帰って寝なさい!あたしはいいから!」
俺 「あ・・・・・」
俺 「・・・じゃぁ、近くの駅まで送るよ。」
T 「うん!ありがと!!」
あぁ・・・・作戦失敗。
運転してるようなしてないような、俺の思考は悪循環を続けた。
(危ない危ない)
そうこうしていると、三宮に着いてしまった。
T 「今日、1日ありがとうございました!!めっちゃ楽しかった!!」
お決まりのフレーズ。
俺 「う・・・うん。」
不完全燃焼の俺。
T 「明日も仕事頑張ってね!」
もう、別れなのか?!
心臓が鼓動は止まらない。
俺 「あ・・・・・・・!!!」
Tちゃんはドアを閉め,バス停の方へと向かう。
後ろで大きなハイジのランチボックスを持ったTちゃんは、大きく手を振ってくれる。
俺は車を止めたが、そこにはもうTちゃんの姿は無かった。
もどかしい気持ちや,腹立たしい気持ちや、不甲斐無い気持ちが混在し,俺は全身の気力が抜けてしまった。
とても、悲しくなった。
一発ビンタしてみた。
痛かった。
それ以上に、胸が痛かった。
でも、終わってしまった事は仕方ない。
取り返しがつかない。
俺は,こんな気持ちだったが,Tちゃんは知らない。
コレで良かったのだと思う。
俺なんかが,Tちゃんの横なんて勿体無い。
一緒に居て楽しいけど、この関係が崩れるのはもっと嫌だ。
俺は,情けない奴だ。
・・・・・・。
家に着き、魂の抜けきった俺に暖かいメールが届いた。
Tちゃんからだ。
“ウンタマ子の優さに包まれながら、もう寝ます”
嬉しかったが,不甲斐無い自分に嫌気が差して、ネガティブに走っていた。
俺 「俺なんて・・・俺なんて・・・」
この意味を俺は知る事無く、寝床に着くのであった。
あの二人で眺めた空が清々しく感じ、忘れられなくなったのは、もう一人居た事も知らずに・・。
その場所は『六甲ガーデンテラス』
去年の11月。
兄に「星が綺麗に見える所教えてや」と頼んだ所、兄弟二人で、意味も無く真夜中に車を走らせて辿り着いた場所がソコだ。
その時、運良く晴れ渡っていて、星が良く見えたのを覚えている。
星だけじゃなく、神戸の夜景も綺麗に見渡せる場所だ。
夜に何度か行った事があったので、昼間はどんな感じか行ってみたくなった。
俺 「着いたよ。な?ヨーロッパ調の造りになってるやろ?」
T 「わぁ、山の上にこんな所があるんやねぇ。」
俺 「営業してる時間に来るの初めてや。いつもは入り口で車止めて、忍び込むねん。めっちゃ夜景綺麗ねんで!今度は夜に連れて来るよ。」
T 「うん。」
車を置いて、テラスへ向った。
最初に向ったのは『リトルホルティ』
海外のお菓子や飲み物が沢山置いてある店だ。
ズラリとお菓子の棚で陳列され、日本人から見たらいかにも怪しげな物が沢山ある。
冷蔵庫の中は見た事無いような飲み物も沢山。
T 「ウンタマ子!見て!見て!」
冷蔵庫にズラリと並んだ怪しげな飲み物を指差し、
俺 「うわ!懐かしい!これさぁ、シアトル行った時にな、のど渇いたらいつも飲んでた!」
ふと、違う飲み物が目に入って、手に取ると・・・
俺 「・・・え?何これ?made in ・・・ドイツ?!」
T 「あ!これはフランス産や!なんか凄いねぇ。」
アメリカやら、ドイツやらフランスやら、とにかく沢山の飲み物が置いてある。
のどが渇いて、多少気になったので購入する事にした。
俺 「フランス産のこのピンクレモネードの奴!」
T 「あたし、このドイツ産のバナナジュース!」
それぞれ気に入った飲み物を購入。
俺 「どんな味するんやろな?!」
T 「ねぇ。」
他にも、店内をぐるりと見てまわり、アメリカ産の海苔味チップスや、ドでかいチョコレートの固まり、誰が好んで買うのだろうと思う品が沢山置いてあった。
得体の知れない飲み物を片手に神戸を一望できる『見晴らしの塔』へ直行した。
夜に来た時はいつも閉まっていて、上った事が無いのだ。
どんな所なのかとても気になっていた。
螺旋階段を登り、頂上に着くと・・・
夕方6時頃
俺は、神戸の街なんてどうでもよかった。
さえぎる物も無く、夕暮れのオレンジと、まだ染まりきっていない青のグラデーション・・・
そして、太陽の光を演出するかのような、存在感のある雲・・・
薄暗い螺旋階段を抜けた瞬間、目の中に飛び込んできた。
T 「うわぁ、綺麗だねぇ。」
俺 「・・・・・うん。めっちゃ綺麗。」
ちょっと間、言葉を失った。
俺 「・・・んじゃ、開けますか。」
T 「うん。」
二人 「かんぱーい」
“ゴクッ”
ピンクレモネードを購入した俺は
俺 「うわぁ!なんか凄い!この炭酸、口の中で2倍に膨れてシュワシュワ~ってする!」
バナナを購入したTちゃんは
T 「・・・・うん。おいしい。」
俺 「え?どんな味?」
二人で交換
T 「ほぇ~!ホンマや。2倍になるね。その表現合ってる!」
俺 「え?これ美味しい?バナナやのにちょっと酸味無いか?俺はちょっと・・・。」
結局最後まで残ったのはこのバナナジュース。やっぱ美味くなかったのな。
しばし、空に見とれている二人。
俺 「あの夕陽とさぁ、雲が重なってるやん?なんか雲が燃えてるように見えるよな。そんで、雲から光が漏れて閃光状に見えるのが綺麗や。はぁ・・・やっぱ空好きやなぁ、俺。」
俺 「夕日と反対側の空はまだ青いよな。光が当たってる雲がピンク色に染まってる。まだ夕陽に染まってない青と少しピンクがかったうろこ状の雲・・・あれも好きやなぁ。」
T 「ホンマに空が好きなんやねぇ。」
俺 「うん。空好きー。」
T 「・・・・・・・」
T 「ねぇ、ねぇ。」
T 「あちらのソラスキー?」
俺 「うん。スキー。」
T 「こちらのソラスキー?」
俺 「コチラノソラスキー。」
T 「じゃあ、アチラトコチラ、ドチラガスキー?」
俺 「う~ん・・・コチラガスキー。」
俺 「Tちゃんはドチラガスキー?」
T 「う~ん、コチラノソラスキー。」
手をそえながら、なんだかロシア語のような会話に二人で笑ってしまった。
後に、綺麗な空を見る度に俺等は『ソラスキー』と言う様になったのは後の話。
告白
空を眺めながら言うには最高のタイミング。
でも・・・
カップル 「あはははは」
女性二人「ねぇ。そうねぇ。あーでねぇ。」
おっさんワンコと散歩。
塔の上は結構狭い。
こんな密集地帯に4組もの人々が居る中で誰が出来ようか!!
まぁ、心の準備も出来てないし、ココじゃない。
おっさんの可愛いチワワにTちゃんちょっかい出す。
ワンコ 「う~、やんやんやん!!」
吠えられる。
人見知りするワンコだが、高い所から下を見下ろすのが好きな変わったワンコだそうだ。
と、おっさん、エンドレス独り言。
約、30分ほど空の色が変わるのを眺め、心に焼き付けた。
あの秘めた思いと共に見たあの空は一生忘れない。
その後、雑貨屋さん『ホルティ』へ向った。
海外の食料品の他に、民族衣装や、民芸品、ガラス細工に、和風な雑貨、見るだけでも楽しめる店内をあーだこーだ言いながら、見て回った。
アートなポーズをとりながら、延々と笑いが絶える事無く、その場を去った。
俺 「スイス料理行きますか!チーズフォンデュー!!でも、まだあんまり腹減ってないんやけどな。Tちゃんは?」
T 「あたしもあんまり・・・。でも食べれるよ!」
俺 「よし。じゃあ行きますか!」
行かなければならない!
このまま帰してなるものか!!
でも、粉砕したらどうする?・・・・。
車を走らせ、神戸の街へと戻っていった。
車を止め、あまり腹が減ってない俺等は足上げやスキップなどしながら、無駄に動き回り自転車にぶつかりそうになりながらアノ店へ向った。
『SWISS CHALET』(スイスシャーレ-)
神戸のハンター坂を登った所に位置する。
前に、行こうと話していたが、Tちゃんの友人が料理長のイタリア料理へ行った為、後回しになってしまったのだ。
Mとも、北野を廻った時に「エスカルゴ?!」と興味津々で前々から行きたかったのだ。
品の良いウェイターに連れられ着席。
やっぱり、腹が減ってない俺等は、チーズフォンデューと温野菜とサラダのみ注文。
今日は本当にスイス三昧である。
ココのチーズフォンデューはオリジナルらしく、スイス本場の味が楽しめる。
ラムや、シェリー、他には企業秘密的なモノがわんさか入っており、とても芳香な香り。
俺は、チーズが大好きだから、楽しみで仕方ない。
でもTちゃんは・・・
T 「うわー。初めて食べる!良い香りやね。これなら食べれるかも。ウンタマ子先に食べて。」
俺 「うん。じゃあ、行ってきます。」
フワフワのパンに長いフォークを刺し、チーズに絡み付ける。
トロトロのチーズがパンに絡みつき、掬い上げると香りと共にチーズが伸びる伸びる。
素早く口へ放り込むと・・・
俺 「は・・・はぐ!!はぇぇぇ~!あがっ!あがぃっ!!」
熱かった。
猫舌だが、とにかくお酒の良い香りがして、チーズの濃厚な味。
病み付きになった。
俺 「めっちゃ、おいしいよ!!」
T 「ほんま?じゃあ、あたしも食べる!」
俺 「おぅ!行って来い、行って来い!!」
恐る恐るチーズを絡み付け、口の中に放り込む。
T 「ほぇぇぇぇぇぇぇ」
俺 「え?!あかん?!熱かった?大丈夫?!!」
T 「ううん。おいしい!初めて美味しいと思った!!」
俺 「え?初めて?」
T 「うん。あたし、実はチーズめっちゃアカンかってん。」
俺 「え?!うそん!!!じゃあ、今日ずーっとアカンかったん?!」
T 「いや、そうじゃなくて、食べれる奴もあんねんで?でも、匂いのキツイ奴とかあかんねん。それでも、これはホンマに美味しい!!」
俺は知らずに、苦痛を与えてた様子。
ごめんよ。知らずにチーズ三昧にしてしまって。
スイスと言うより、チーズ尽くしになってしまったよ。
それから、本当に美味しいと堪能して貰い、食も終わりに差し掛かっていった。
俺 「ちょっと、トイレ行って来るわ。」
T 「うん。いってらっしゃーい!」
トイレに入り、鏡の中の自分と対話する。
俺 (そろそろか?今?今なのか?ってか、今以外に考えられないし・・・あー!!でも、また振られたら、どうする?気まずくなったらどうする?・・・止めとこ。無理や。やっぱ無理や・・・・)
心の声。言いたい俺、言いたくない俺、両者激突する。
言いたい俺 「今まで、色んな所行って、感触良かったやん!!大丈夫やって。気に入って貰えるって!」
言いたくない俺 「そうやけど・・・でも、また仲の良い友達と気まずくなったらどうするねん。しかも良く逢うねんで?その都度、微妙な空気漂うのとか嫌やん!!」
言いたい俺 「好きなんやろ?一緒に居たいんやろ?じゃあ、今言うしかないって!」
言いたくない俺 「好きやと思う。でも、まだはっきり好きってどういうことかわからんやん!そんな状態で言って、もしOKやとしても、相手に悪いって。」
言いたい俺 「あー、もう!グチグチ抜かすな!男やろ!だから男らしくないと言われんねん!はっきりしろ!」
言いたくない俺 「勇気がないんや。喉まで来てんねん!勇気が・・・」
両者、平行線のまま。
あまり長いと、う○子と間違えられたら嫌なので未だもやもやした状態で、席へと戻る。
俺 「ふー。すっきり。」
全然すっきりしてない。
でも勢いに乗せて話を切り出そうと息を呑んだ瞬間!!
T 「次、あたし行ってこよーっと。」
ぅおい!!
仕方ない。
俺 「い・いってらっしゃーい!そこ曲がった所ね。」
また、同じように1人考え込む。
長いような、短いような1人の時間をただひたすら待つ。
T 「ただいまです。」
Tちゃんが席に着いて、俺はまた息を呑んだ。
俺は,言う気持ちの準備に取り掛かった。
俺 「・・・・・・・!!!!」
目をカッと開き、Tちゃんの顔を見る。
T 「???」
目が合ったので『何?』という顔つき。
俺 「!!!!!・・・・・ふぅ。」
顔を避け、さっき呑んだ息を、深呼吸として抜く。
勇気が出ない。
たった一言が言えない。
T 「???」
首をかしげる。
また息を一気に呑み・・・・・・!!!!
俺 「・・・・・・・・出ようか。」
ばかぁぁぁああああああああああああああああ!!!!!!!!!
心臓が口から出るかと思った。
あの一言を言う代わりに本当に心臓が口から出るかと思った。
心臓バクバク鼓動し、手が震えだした。
言い訳だが、なんとなく出る雰囲気だった。
また、席について話すなんて不自然だ。
だから、帰るまでになんとかしないと。
車までTちゃんの話す声や内容を聞いているような聞いていないような、もうそれどころじゃなかった。
なんとかしないと。
俺 「俺、車で送っていくよ!」
運転すれば、まだ時間はある。
T 「え?!いいよ!明日早いんでしょ?」
俺 「うん。で・でも・・・・。」
T 「今日1日運転しっぱなしでしんどいやろうから、帰って寝なさい!あたしはいいから!」
俺 「あ・・・・・」
俺 「・・・じゃぁ、近くの駅まで送るよ。」
T 「うん!ありがと!!」
あぁ・・・・作戦失敗。
運転してるようなしてないような、俺の思考は悪循環を続けた。
(危ない危ない)
そうこうしていると、三宮に着いてしまった。
T 「今日、1日ありがとうございました!!めっちゃ楽しかった!!」
お決まりのフレーズ。
俺 「う・・・うん。」
不完全燃焼の俺。
T 「明日も仕事頑張ってね!」
もう、別れなのか?!
心臓が鼓動は止まらない。
俺 「あ・・・・・・・!!!」
Tちゃんはドアを閉め,バス停の方へと向かう。
後ろで大きなハイジのランチボックスを持ったTちゃんは、大きく手を振ってくれる。
俺は車を止めたが、そこにはもうTちゃんの姿は無かった。
もどかしい気持ちや,腹立たしい気持ちや、不甲斐無い気持ちが混在し,俺は全身の気力が抜けてしまった。
とても、悲しくなった。
一発ビンタしてみた。
痛かった。
それ以上に、胸が痛かった。
でも、終わってしまった事は仕方ない。
取り返しがつかない。
俺は,こんな気持ちだったが,Tちゃんは知らない。
コレで良かったのだと思う。
俺なんかが,Tちゃんの横なんて勿体無い。
一緒に居て楽しいけど、この関係が崩れるのはもっと嫌だ。
俺は,情けない奴だ。
・・・・・・。
家に着き、魂の抜けきった俺に暖かいメールが届いた。
Tちゃんからだ。
“ウンタマ子の優さに包まれながら、もう寝ます”
嬉しかったが,不甲斐無い自分に嫌気が差して、ネガティブに走っていた。
俺 「俺なんて・・・俺なんて・・・」
この意味を俺は知る事無く、寝床に着くのであった。
あの二人で眺めた空が清々しく感じ、忘れられなくなったのは、もう一人居た事も知らずに・・。
by unntama01
| 2005-10-15 17:59